安心はしあわせ 保険の鶴亀

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inswatch【Vol.188 2004.3.8】
の記事から紹介です。

=鶴亀誕生物語=  武山敏彦

宮城県石巻市の代理店、森山保険さんが会社名を変えた物語です。「産み の苦しみ」、「天から降りてきた 鶴亀」というような項目があります。 「鶴亀」決定にいたるまでの聞くも楽しい内容です。
武山さんの過去の記事から引用させていただきます。
=後継者の役割とは、「その時代時代において常に先進的・革新的な技術を 柔軟に採り入れ、変化を恐れない事と、創業者の精神を次世代に正しく伝え て行く事」と考えます。=
(inswatch Vol.83(2002.3.4発行)
後継者としての着実な歩みぶりは、同じ代理店として参考にさせて頂きたいと思います。
紹介文:稲葉幹雄 氏

 

   【 inswatch 】Vol.188
===============================================Vol.188 04.03.08=======
  「鶴亀誕生物語」    武山 敏彦
◆はじめに

 弊社は、平成16年4月1日付を持って、合資会社 森山保険を解散・清算し
有限会社 鶴亀(つるかめ)として新たなるスタートを切る事となった。

◆なぜ変わらなければならなかったか

 キッカケは本インスウォッチ誌157号(2003年8月4日付)の記事であった。
中崎章夫氏の巻頭言:「め・て・みみ」、その日のテーマは「代理店名」。
そこには【名称にズバリ○○保険とか、○▽生命保険とか○□損保とかのネーミングをつけているケースを見かけることもある。実はこのケースは保険業法7条2項法に触れるので要注意だ】と書いてあった。
何の事はない、まさに我が社の事だったのである。ショックだった。

◆ならぬものはならぬ~いまここでやらねば

 中崎氏の記事を見て腹を決めたと言って良い。様々な困難は容易に予測出来たが、「ならぬものはならぬ」と断固変える決意をした。

◆最初の名前はカタカナ=横文字

 折角、名前をつけるんだから、カッコ良く先進的なものにしようとみんなで話し合った。実は、私には長年温めていた社名があった。それはデイーブレィク(DAY BREAKE)という名前だった。直訳すると「あけぼの」「日々新た」という意味で、一日を創造的に乗り越えて行こう、ブレイクしていこう、というようなコンセプトであった。スタッフも賛同してくれた。
新会社のロゴやデザインを多少お金が掛かっても良いからと、長年お世話になっている広告代理店の社長にお願いした。しかし・・・である。

◆決まらないデザイン

 11月に発注したデザインが中々出来あがらない。
広告代理店の社長に聞くと「デザイナーが中々イメージ出来ない」との事であった。時間はどんどん過ぎて行く。第1回の会議は、年も押し迫った12月の末であった。見せられたデザインは、全く私の感性に響かなかった。役員である妻も同じだった。もう一度やり直してもらうよう社長にお願いした。年が明けて1月21日、第2回目の会議を開いた。しかし、そこでも決まらなかった。(何かおかしいぞ・・・)私の心の中に、何か決定的なものが欠けているのでは?という不安感が広がっていった。

◆何かが間違っているのでは?

 こういった時は、必ず何かが間違っているのだ。長い自問自答の末に気づいた事は、肝心要の「お客様はどう思うか」という視点が全く抜け落ちている事だった。何のために会社の名前を変えるの?誰に向かって経営をしているの?誰に一番喜んでもらいたいの?誰の幸せを一番願って変えようとしているの?

◆師=お客様からの諭し

 そんな疑問を確信に変えて下さったのが、やはりお客様である。人生の師とも慕い、尊敬しているお客様ご夫妻に相談した所、大変なお叱りを頂戴した。
「どうして森山保険というシンプルで誰でも呼び易い名前を変えるの?」
「横文字なんか覚えられないし、覚える気も無い」
「良いと思っているのは貴方だけで、それは自己満足に過ぎない」

◆師=お客様の想いを受けて

 冷静になって考えてみた。お客様の立場に立って見れば、長年親しみ、呼び慣れた「森山保険」から、いきなり「デイーブレイク」では戸惑うのが当たり前だ。
どうだカッコイイだろーと言ってみても、お客様にとっては、頼んでもいないのに、勝手に変えられて本当に迷惑である。いくらこちらで、理念やコンセプトを話したとしても、どこまで行っても屁理屈に過ぎない。いちいち恩着せがましく説明される方がいい迷惑である。お客様は、これからも「森山保険」と言い続けるだろうし、私達も引きずるであろう。
それでは、折角つけた新社名の意味が無い。(やめよう…)私の中で覚悟が決まった。しかし…である。

◆産みの苦しみ

 さて、どんな名前が良いのだ?一旦、「デイーブレイク」で来たものを変えるのは、容易な事ではない。それは一種、臨月を迎えようとしていた命が、終えてしまったと同じような感覚だろうか。それに対する執着と後悔、甘く切ない想い、(もう一度…)覚悟と決意をした筈なのに、心は揺れるのである。何と人間の心の弱さよ。浅はかさよ。己れの愚かさよ・・・。

◆天から降りてきた 鶴亀

 一週間経った。もう限界であった。いくら考えても何も出て来ない…。(ダメだ、俺は)その時である。かーごーめー、かーごーめー という唄が聞えて来た(ように思えた)。
つーるとかーめがすーべったー・・・んっ?つるとかめ??
鶴亀??? 自分の体の中に稲妻が走った。そうだ!鶴亀だ!! 保険の鶴亀。
幼稚園のお子さんでも、お年寄りでも、誰でも覚えられる名前。これだ!!!
1月27日の事だった。

◆世情

 今の世の中の有様はどうだろうか? 児童虐待、出会い系をキッカケにしたストーカーや殺人、DV等による夫婦の離婚増、リストラや自己破産に伴う自殺者の急増、世界に目をやればイラク戦争後の目を覆いたくなるような破壊と憎悪が繰り返されるテロ、民族の対立、貧富の差・・・。

◆鶴亀に込められた願いと祈り

 こんな荒んだ世情の中に有って、何かホッとできる、その名前を聞いただけでニコッとできるもの、名刺をお渡しした時に「鶴亀」と聞いて、苦虫をつぶしたり、縁起モノだから否定する人はいないだろうなぁ、と。長い商品を買って頂くのだから、お客様の長寿と永久の繁栄を願い、祈る事にもつながる名前。保険の鶴亀に加入する事で、まず事故に遭わないだろう、取引すること自体がおめでたい事だとか。勘違いして全部任せますよ、と仰って下さったら(本当にそう言って下さったお客様も出てきた)こんなに嬉しい事はない。

◆鶴亀のもつ不思議な力

 その夜、先ず仙台に行った妻の帰りを待ち、紙に書いた新社名を見せた。一晩中笑い通しだった。翌朝、スタッフを集め発表した。やはり一日中笑いっ放しだった。広告会社の社長にFAXを入れた。笑い過ぎてアゴが外れそうになったと言った。今までのデザインコンセプト中止分で〇十万円のキャンセル料を支払う事になったが、心の中は非常にさわやかだった。
笑わないと思っていた得意先の女性社員さんに、ドキドキしながら鶴亀になることを告げた途端 、ぷーっと噴出し「ほんとですかぁー?」と最高の笑顔で応えて下さった。
(そうだ、みんな元々ステキなんだ・・・)鶴亀の前では、みんな素直になるんだなぁ、 感動した。

◆おわりに

 鶴亀になった途端、あれほど心配した森山保険への不安が何処かに飛んで行ってしまった。デイーブレイクは最初から無かったような扱いになってしまった。
まさに私自身、いや当社自体がブレイクスルーしてしまったのかも知れない。
今という地点から過去を見れば、既に鶴亀という名前は与えられるべくして与えられていたのだ。それに気付けないのは、自分自身が傲慢である証拠であり、本当の素直さが無いのだと今なら確信を持って言える。
過去への執着は心の鏡を曇らす。全ては自分自身に原因があるのだ。
さて、本稿も終わりに近づいた。お前に悩みはあるのか?と良く聞かれる。
悩みはある。どんな? 当社のスタッフが銀行や法務局に行ったとする。
「鶴亀さまー」「保険の鶴亀さまー」と呼ばれた途端、周囲の嘲笑、爆笑、興味津々の目線に耐えられるだろうかという事である。
(宮城県石巻市あけぼの3-9-1(有) 鶴 亀  代表取締役)