安心はしあわせ 保険の鶴亀

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鶴亀の小さなブランドづくり(13)

保険の真髄を「語って」来たか

◇保険金支払い漏れの衝撃
9月7日の記事で、損保業界全体の保険金支払い漏れは、大手5社で12万件以上、総額では50億円規模に達するとの見通しを示した。今更言うまでも無く、保険金の支払いは、損害保険制度の根幹に関わる問題であり、「一件の契約の重みと責任」の原点に立ち返り、業界が保険契約者の信頼を著しく裏切ってしまった、という事実を、私も含めた一人一人が、深く受け止め、お客様信頼回復の為の努力を、今後一層積み重ねていく事が、大切であると感じている。

◇現場力の低下を露呈

図らずも今回露呈したのは、システムの脆弱さだけではない。寧ろ、支払いの最先端である現場力の低下であろう。一つの支払い案件をどのように捉えていたのか?「お客様にお約束した保険金をお届けする」という当たり前の事が徹底されていたのか。システムだけではなく、契約内容のチェックを、再度支払い担当者自らが確認したのか。「この案件だったら、この特約も適用されるな」という経験則が働いたのかどうか。取り扱い者が、お客様の代理人として確実に保険金が支払われていたかをチェックしたのかどうか?

◇保険の真髄を「語って」来たか

「収益重視、コストの削減、経営の効率化」実しやかな大義名分の元、それを正義と信じ保険業界は進んで来たが、本当にそれで良かったのだろうか?若しかしたら一番大切な事をどこかに置き忘れてきたのではないか?保険という仕事の本来の目的は何だったのか?何のために保険に入るのかという事を、お客様の立場で考え、真剣に取り組んで来ただろうか?常に本誌で、佐喜本さんが叫ばれているように、それを真摯に「語って」来たか?保険代理店は、保険流通の一チャネルに過ぎないと、自らを卑下し貶め、契約獲得のみに目を奪われ、質的向上の努力を怠っては来なかったか?

◇つまづきは小さなところから

今回の不祥事は、正に「つまづきは小さなところから」を、地で行ったものであろう。対人臨費特約の支払い漏れに代表されるように、普段は気にも留めない、小さな石ころの特約が、「まさか!」業界全体の足元をすくう形になるとは誰が予想しただろうか?しかし、これは「ハインリッヒの法則」を持ち出すまでも無く、日常業務の中に無数に放置された「ヒヤリ・ハッと」の集積である(自らが原因を作っている)事を、今回の不祥事から代理店経営者は謙虚に学ぶべきであろう。人は大きな石には躓かないものなのだ。

◇当たり前の事を当たり前に

弊社は、特別な能力がない事もあり、常に「当たり前の事を当たり前に」をモットーに掲げ、小さな手間隙の掛かる仕事を最優先に取り組んで来た。この「雑務」と呼ばれる、一見何の利益にも直結しないような日常業務の中にこそ、お客様の信頼を勝ち取る「宝」が隠されていると信じて今日まで来た。そして、実際の現場から「大事な事ほど手間隙が掛かる」ことを学び、愚直に手を抜かずに積み重ねてきた事が「信用」という形の財産となっている。

◇「約束を守る」原点に返ろう

例えば「対人臨費」1万円をお支払いする為に、保険金請求書を持って夜、ご契約者を訪ね「被害者に、これでお見舞いをしてお客様の誠意を伝えて下さい」と説明し、ご署名とご捺印を頂いてきた。全く保険会社の評価や手数料に直結しないが、お客様の「へぇー、保険ってすごいんだねー」と喜んでいただく姿に、どれだけ勇気とこの仕事の意義を教えて頂いただろう。

やはり保険は、扱う人間が生命を吹き込んだ時に、初めて輝きを増す商品なのだ。そしてブランドとは、どんな小さな事でも疎かにしない「約束を守る」事で、少しづつ育って行くものであり、失った時に初めてその「価値」が分かるものだと思う。全国の代理店仲間が、昼夜を問わず事故現場に向かう姿を想う時、本当に厳粛な気持ちになります。お互いにがんばりましょう!
保険代理店専門メールマガジン【inswatch】
2005年9月12日 Vol.237号掲載
http://www.inswatch.co.jp