安心はしあわせ 保険の鶴亀

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鶴亀の小さなブランドづくり(20)

お客様と保険募集改正ルール

◇何気ない質問から

先日、自動車保険をご加入いただいているお客様から、火災保険のご相談を頂戴した。丁度、5年前に新築されたばかりで、火災保険は金融公庫から融資を受けた関係上、自動的に加入しているとのこと。しかし、それは建物のみで、家財の補償については、まったく入っていないので、今回、プランニングをして欲しいとのことであった。

早速、伺って奥様からヒアリングをさせていただいた。建物については、融資が完済されるまで、公庫さんのご契約になりますので、とお断りした上で、次の質問をさせていただいた。「あのー、公庫さんに地震保険は、入っていらっしゃいますか?」 基本金額の満額(主契約の半分)入っているとの事。
「昨年、お盆の、宮城県沖地震で、被害はありませんでしたか?」
と聞いてみた。「ちよっと、内壁に亀裂が入った程度で・・・」と仰る。

◇潜在化していた保険請求の権利

「それは、連絡されたんですか?」と聞くと「いいえ、この程度では出ないと思いましたし、それに、どこに連絡していいのか分からないんです」
「実は、それが一番不安だったんで、鶴亀さんにお聞きしようと思ったんです」
「あのー、申し訳ないんですが、証書見ていただいてよろしいですか」と奥様。
差し出された証券を拝見すると、確かに地震保険は加入されている。

「もし良かったら、外の基礎を見せてください」 そういって、奥様と共に外に出た。よーく周囲を確認すると、基礎部分に小さな亀裂が5箇所も入っている。
外壁も、目を凝らしてみると数箇所亀裂が入っている。「これ、出ると思いますよ、すぐに連絡してみましょう」 奥様は、目を丸くして「えーっ?!」
「仮に出なくても、駄目もとじゃないですか、さぁ電話してみましょう」

◇保険の本当の価値とは

証券に、記載されている事故連絡先(SJ)の電話番号にマーカーを引き、早速掛けていただいた。奥様は、おそるおそる電話をかけられたのだが、快く受付をしていただいたようで、ホントに安心された様子であった。
「武山さん、来週の月曜日に、鑑定人という人が来てくれるそうです」
「ねっ、奥さん、きちんと対応してくれるでしょう、よかったですね」

月曜日の、午後3時頃 事務所の電話が鳴った。
「武山さん、今、鑑定人さんが帰られました。それで、ナンと保険金が貰える事になったんです。本当にありがとうございます!」 電話の向こうの声が弾んでいる。「私、保険って、入っていればそれでいいんだと思っていました
が、今回のことで“誰に入るか”が、一番大切なんだって気づかせていただきました」「そして、本当に心から信頼し、相談が出来る方が、必要なんだって思いました」「もし、鶴亀さんに聞いてなかったら、一生知らないままで(保険金も請求出来ずに)終わっていたと思うんです。私のような人が、世の中には沢山いると思うんです」 過分なお言葉に恐縮した。

◇大切なのはお客様とのコミュニケーション

今回の体験で、また一つ学ばせていただいた。一連の保険金未払不祥事をキッカケに、金融庁より、保険募集において、「契約概要」・「注意喚起情報」をお客様に提供、保険商品がニーズに合致することを「意向確認書面」を作成、交付保存を義務付けるという、現場にとって大変厳しい法改正がなされた。
法律を遵守することは当然である。しかしながら、本質的な議論をすれば、果たして書類を渡し、確認し、印鑑を押していただければ、お客様のご理解に繋がり、完璧な保険募集をしたという証になるのだろうか?よっぽどの厚顔か鉄面皮でない限り、そう言い切ることは難しいのではないかと思う。

◇お客様にも自己責任を

特に、最終的な保険金支払いまで責任を持つということになると、今回のお客様の事例のように、支払い対象案件でありながらも、その基準が明確に認識されていないが故に、権利が潜在化し、「どこに相談すればいいのか」という初歩的なハードルすら越えられない為に、最初のアクションを起こせない、といった例は、他にも沢山あるのではないかと思った。キツイ言い方をすれば、お客様にとっても、「どこに加入されるのか」 は、「自己責任」の範囲であり、(今回の金融公庫さんのケースは、強制加入であるから例外と言えようが) 慇懃無礼な言い方で、恐縮であるが、ご自身の権利を行使していただく為にも、保険のことを、もっと知っていただきたいと思うし、私達もより一層の努力をしなければならないと思う。

◇わたしの願い

最後に金融庁や、保険会社の方々に、殆どの代理店が、このように真面目に「お客様のために何が出来るか」という職業倫理観を持って、日々働いているということをご理解いただきたいと思う。「手数料に反映されないものは何もしない」
「無駄なことは一切やらない」といった経済至上主義的な考え方が、昨今幅を利かす中で、法律や規則がなくても、お客様との人間的信頼関係で成り立ち、保険本来の「互いを思いやる」という精神、「相手の立場に立って考える」といった土壌が、充分に発揮される(コストのかからない)高度な仕組みが、現実に存在し、機能していることを、こころの片隅にでも置いていただければと切に願う。
保険代理店専門メールマガジン【inswatch】
2006年4月24日 Vol.299号掲載
http://www.inswatch.co.jp